■ フラワー
エルベ河畔の古都マイセン、ヨーロッパ硬質磁器揺らんの地は、また優れたクリスタル工芸のふるさとでもあります。マイセン磁器完成をその深い学識で支えた化学者、ヴァルター・フォン・チルンハウスによってこの地にクリスタルガラスが生まれたのは、1700年頃。以来ヨーロッパ有数の文化を誇るザクセンに、「磁器」と「クリスタル」という二つの卓上芸術が、今日まで受け継がれてきました。現在のマイセンクリスタル社が設立されたのは、1947年。優れた技術をもつ職人と、際立ったそのエングレーヴィング手法により、たちまちヨーロッパのトップブランドとして認められるようになりました。マイセンクリスタルのきらめきをここにご紹介いたします。
マイセンクリスタルの起こり
▲マイセンの風景
マイセンクリスタルの始まり
▲マイセンの有名な「ブルーオニオン」柄のワイングラス
マイセン磁器製作所の協力を得ることにより、ガラス仕上げ加工の芸術性を、さらに高い水準に引き上げることができ、結果的に国営化はマイセンクリスタルにとって実り多いものになったといえます。
現在のマイセンクリスタル
1990年7月1日、東西ドイツの再統一前に、ホルスト・ゼンディッヒの手に会社は戻り、「VEB(国民所有企業)マイセンブライクリスタル」は、「マイセン ブライクリスタル ホルスト・ゼンディッヒ」となります。
1994年、彼の死後、妻・マリーズが事業を引き継ぎ、「マイセナーブライクリスタル社マリーズ・ゼンディッヒ」となり、現在に至ります。 ハンドカットによる定番の花柄シリーズや、高度な色被せ技法から生まれる多彩なコレクションで、マイセンクリスタルは世界中のファンを魅了し続けています。
Mの刻印
▲マイセンクリスタル社のロゴであるM
▲職人のイニシャル
マイセンクリスタルの製品は、すべて手作業で作られ、マイセンクリスタル社のロゴであるM と職人のイニシャルがつけられます。
ザクセンのガラス工芸には、数百年にわたる長い伝統があり、熟練した優秀な職人たちがそれを守り、育み、創造性を加えてきました。光の反射を計算に入れた上で、細心の注意を払ってガラスの上に刻み込まれた模様は、まさに造形美術といえます。
製造工程
マイセンクリスタルが完成するまでの製作手順をご紹介します。
①原料
珪砂約60%とともに、酸化鉛を24%以上含むガラスを「クリスタルガラス」と言います。透明度、屈折率が高いため、素晴らしい輝きを放ちます。
②成形
1300~1500℃の高温に熱せられたガラス種を吹き竿の先に取り、宙吹き(空中で吹き竿をまわしながら息を吹き込んで成形)や型吹き(吹き竿に巻き取ったガラス種を型の中に吹きこんで成形)で形を整えて形をつくります。透明ガラスの外側に色ガラスを被せたものを色被(いろきせ)ガラスと呼び、マイセンクリスタルのなかで特に人気があります。
▲マイセンの風景
4000年以上昔、チグリス、ユーフラテス川の流域に栄えた世界最古の文明発祥地メソポタミアではじめて作られたガラスは、エジプト、古代ローマの戦利品の一つとして、各地へ伝わり、16世紀頃にボヘミア地方へ伝わったと言われています。
磁器製作の研究を支えた科学者、エーレンフリート・ヴァルター・フォン・チルンハウスは、ザクセンガラスの生みの親でもあり、ドレスデンには1700年頃、最初のガラス工場が創設されました。
磁器製作の研究を支えた科学者、エーレンフリート・ヴァルター・フォン・チルンハウスは、ザクセンガラスの生みの親でもあり、ドレスデンには1700年頃、最初のガラス工場が創設されました。
▲マイセンの有名な「ブルーオニオン」柄のワイングラス
ポーランド北西部シュテッティーン出身のホルスト・ゼンディッヒは、第2次世界大戦の混乱が続く1947年に、マイセンにクリスタルガラス研磨工場 「ホルスト・ゼンディッヒ」を設立。手作業によるクリスタル製品はすぐに有名になり、1956年にはアメリカへの輸出が始まりました。
しかし、1972年、「ホルスト・ゼンディッヒ」は、東ドイツ政府によって国営化され、「VEB(国民所有企業) マイセンブライクリスタル」となりました。
国営化後も、専門家として引き続きマイセンクリスタルを支えたゼンディッヒにとって、この時期は苦悩の時代でありましたが、新しい国の管理下で、それまでは実現不可能であった、マイセン磁器製作所の柄を用いたグラスの製作が可能となりました。
しかし、1972年、「ホルスト・ゼンディッヒ」は、東ドイツ政府によって国営化され、「VEB(国民所有企業) マイセンブライクリスタル」となりました。
国営化後も、専門家として引き続きマイセンクリスタルを支えたゼンディッヒにとって、この時期は苦悩の時代でありましたが、新しい国の管理下で、それまでは実現不可能であった、マイセン磁器製作所の柄を用いたグラスの製作が可能となりました。
1994年、彼の死後、妻・マリーズが事業を引き継ぎ、「マイセナーブライクリスタル社マリーズ・ゼンディッヒ」となり、現在に至ります。 ハンドカットによる定番の花柄シリーズや、高度な色被せ技法から生まれる多彩なコレクションで、マイセンクリスタルは世界中のファンを魅了し続けています。
Mの刻印
▲マイセンクリスタル社のロゴであるM
▲職人のイニシャル
製造工程
マイセンクリスタルが完成するまでの製作手順をご紹介します。
①原料
珪砂約60%とともに、酸化鉛を24%以上含むガラスを「クリスタルガラス」と言います。透明度、屈折率が高いため、素晴らしい輝きを放ちます。
②成形
1300~1500℃の高温に熱せられたガラス種を吹き竿の先に取り、宙吹き(空中で吹き竿をまわしながら息を吹き込んで成形)や型吹き(吹き竿に巻き取ったガラス種を型の中に吹きこんで成形)で形を整えて形をつくります。透明ガラスの外側に色ガラスを被せたものを色被(いろきせ)ガラスと呼び、マイセンクリスタルのなかで特に人気があります。
③研削
生地を回転する鉄板の上に載せ、珪素カーバイトと水を加えながら、余分な部分や表面のざらつきを整えます。
④縁削り
ダイヤ研磨盤、木工研磨盤を使って、縁を整えていきます。
生地を回転する鉄板の上に載せ、珪素カーバイトと水を加えながら、余分な部分や表面のざらつきを整えます。
④縁削り
ダイヤ研磨盤、木工研磨盤を使って、縁を整えていきます。
⑤第一カット
目の粗いダイアホイール(研磨機)で、表面を削り取ります。一度削ると修正がきかないため、確実性が要求されます。第一カット後には、完成時のデザインがある程度予想できるまで削ります。
目の粗いダイアホイール(研磨機)で、表面を削り取ります。一度削ると修正がきかないため、確実性が要求されます。第一カット後には、完成時のデザインがある程度予想できるまで削ります。
⑥第二カット
目の細かいダイアホイール(研磨機)で、さらに磨きをかけていきます。この作業は、後に行われる酸での洗浄後に、カットがクリスタル特有の美しい輝きを生み出すために必要とされます。
目の細かいダイアホイール(研磨機)で、さらに磨きをかけていきます。この作業は、後に行われる酸での洗浄後に、カットがクリスタル特有の美しい輝きを生み出すために必要とされます。
⑦第一 エングレーヴィング
カットが終了すると各商品はエングレーヴィング(ガラスの表面彫刻)が施されます。 ダイアモンド製、コランダム(アルミニウムと酸素の鉱物)製のホイルで、細かい模様をおおまかに刻みいれていきます。複雑で、芸術的要素の高いモチーフ(フラワー、動物、人物など)のエングレーヴィングには、さまざまな道具や、さまざまなサイズの、性質が異なる、いろいろな側面を持つホイル、研磨ホイルなどの補助道具も使われます。下描きなしで行われるため、想像力、経験、確実性が要求される作業です。
カットが終了すると各商品はエングレーヴィング(ガラスの表面彫刻)が施されます。 ダイアモンド製、コランダム(アルミニウムと酸素の鉱物)製のホイルで、細かい模様をおおまかに刻みいれていきます。複雑で、芸術的要素の高いモチーフ(フラワー、動物、人物など)のエングレーヴィングには、さまざまな道具や、さまざまなサイズの、性質が異なる、いろいろな側面を持つホイル、研磨ホイルなどの補助道具も使われます。下描きなしで行われるため、想像力、経験、確実性が要求される作業です。
⑧酸洗浄
ホイルをかけた部分に艶をだしたり、表面に付着した細かなガラス片を洗い流すために、硫酸、フッ化水素酸、水の混合液につけて洗浄します。
⑨第二 グラヴィール
ダイアモンド製や、コランダム製、セラミック製のホイルで、さらに細かな部分を仕上げていきます。ここで刻みいれられた模様は、表面に白く残ります。
以下の写真は、作業中のグラヴィーラー(左ロルフ・ハイヤー氏と右ルッツ・ハウフェ氏)。
ホイルをかけた部分に艶をだしたり、表面に付着した細かなガラス片を洗い流すために、硫酸、フッ化水素酸、水の混合液につけて洗浄します。
⑨第二 グラヴィール
ダイアモンド製や、コランダム製、セラミック製のホイルで、さらに細かな部分を仕上げていきます。ここで刻みいれられた模様は、表面に白く残ります。
以下の写真は、作業中のグラヴィーラー(左ロルフ・ハイヤー氏と右ルッツ・ハウフェ氏)。
⑩イニシャル、Mマーク入れダイアモンド製のペン(リューター)で、職人のイニシャルとマイセンクリスタル社のロゴである「M」マークを刻みます。
⑩最終検査、出荷製品が仕上がった後、1点1点熟練の専門職によってチェックされ、洗浄、出荷されます。